母と私の奇跡の介添えストーリー #3
2021年 先勝
「お母さん、おはよう」
なにか落ち込んでるようだ。
母:「お父さんが私をバカにするの…」
私:「どうして?」
話を聞くと悲しいのと悔しいのと母の感情は荒れていた。
私は父にこう言った。
私:「なんで優しくできないの? 苦しいのはお母さんなんだよ!」
父:「何回言ってもわかんないんだよ!おかしくなってるよ!」
私:「それでも理解するまで説明するの、お母さんが納得できるまでわかりやすく伝えるだけだよ…」
そう言って父と一旦話を終え、仕事に戻った。
母と私は、杖なしでしっかり手をつなぎ歩いた。
すこし不安定な足取りだが母なりに頑張っている。
しばらくすると父がまた病院の付き添いについてむきになってる。
週に一回の母の注射を私を含めて3人で行くと言いだした。
母は大袈裟だと困惑している。
父は整形外科の看護師から何故急に痩せてしまったのか聞かれたが、
父は病院に付き添わないので話に説得力がない。
私:「お父さん、今の出産は男も立ち会う時代だよ、だから一緒に診察室行くんだよ。」
父:「…」
母:「私が言うからお父さんは送るだけでいいよ。」
父:「オレ邪魔みたいだな…」
次の日、父は…
父:「待合室で看護師さんが話きいてくれたよ。」
父はどこか安心した顔つきだった。
この出来事がきっかけで父は母を優しくしてくれるだろうか…
これまで母中心の生活は私に潤いを与えた。
今日は母がよく作ってた蒟蒻の煮物作ってみようかな…
2021年 友引
今日の母は、散歩に気のりしない。
だけど、食欲があり残さず食べてた。
片付けもできなくなった母だけどそれも愛おしい。
2021年 一粒万倍日
母の病状を調べてみた。
もしかして…認知症?
項目を目で追うごとに該当する事実を受け止められず涙が溢れて止まらない。
悲しくて、悔しくて、この気持ちをどうやって処理していいかわからない。
気持ちを整理するために大学生の息子と話をした。
私:「ばぁちゃん、認知症かもしれない…」
息子:「前からばーちゃんは同じ事何度も言ってたけど僕は聞いてあげてたよ。」
息子も薄々感じてたが症状が急だったのでショックは隠せない。
この事実を伝えるために、私は昼食を用意し、実家に行く準備をした。
そして皆んなが揃ったところで話をきりだした。
私:「お父さん、お母さん認知症かも…症状が当てはまってる。」
母:「違うよ…」
父:「…」
母はショックで言葉が詰まる。
私:「お母さん、これからは好きなことやりたいことしてね。病院のこと、店のことは考えなくていいから…」
母は何も語らない。
おかずを冷蔵庫にしまい私は実家を後にすると、その足で母に頼まれてた本を買いに行った。
このような本は昔からテーブルに置いてあったので違和感はない。
母:「買ってきてくれたの?ありがとう。前から気になってたんだ。」
そう言ってパラパラめくり満足そうだ。
私が本を買いに行ってる間、父と母は買い出しに行っていた。
好物がテーブルの上に積み上げられていて、冷蔵庫の中もいっぱいだ。
久しぶりに顔馴染みの農家に会って嬉しそう。
その方も体が不自由になり、口が重くなってしまった。
だけど、ひとつひとつの動作や振る舞いに安心感がある。
母:「来年は分からないけど、お互いに頑張りましょう。」
農家:(にこっと笑う)
母らしい言葉だ。
農家で買った梅干しの数を数えている。
母:いっぱい入ってて安いし、ここは私が作る味に似てるんだよ。嬉しいそうである。
私:「お母さん、認知症の病院に行く?」
母:「行かない…人に会いたくないよ。ご飯が食べれるようになればいい。」
私:「うん、わかった…そうしよう 」
母:「私がなにもできないからお父さんが洗濯やってくれたよ、簡単だって言ってた。洗濯物も干して畳んでさ、お仏壇のホコリが気になったけどお父さんが拭いてくれたよ。」
母の気持ちが父を動かしたのだろうか…
父が車を駐車場に置いて戻ってくると、母が見えないところで認知症の対応策を伝えた。
私:「どならないでね、同じこと言っても何度も話を聞いてあげるんだよ。後、好きなことさせてね。」
父は真剣な顔で聞いていた。
そして買ってきた野菜を私にくれた。
今まで感謝を伝えない父だが母がこうなってからはよく
「ありがとう」
を言うようになった。
父の母に対する態度が改善したことが
奇跡だ。
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