母と私の奇跡の介添えストーリー #2
2021年 大安
昨日母がつぶやいた。
「娘がいて良かった… 」
私も自分の存在に親孝行できたと思うと嬉しかった。
朝、母に会いに行くと顔はいつも下を向いている。
私:「お母さん 元気?」
母:「うん…食べたいもの浮かんだんだけどすぐ忘れちゃうんだよ。」
母は食欲がない上に食が細いので栄養より好物を最優先した。
足も弱り陽にあたることが少ないのでひとり歩きに自信がなくなった。
私:「お母さん、今日一緒に歩こうか?」
母:「そうだね、歩かなきゃいけない」
そう言って杖を持った。
私:今日はロータリーを一周しようか?
母:うん…
五分後…
母:「ちょっと休みたい」
久しぶりに外を出たので疲れがみえるが、発見が多いので言葉数が増えた。
辺りを見合わせて…
母:「眼科に行きたいなぁ」
「ここの家住んでるのかな…」
空き地を見ては…
母:「みんな引越しちゃうな…」
「今の家、無理して買って良かった…」
「追い出されるなんて嫌だよ…」
私は相槌を打った。
そして母のペースに合わせた。
少し歩いては休憩を求めるので花壇が見えるベンチに腰掛けた。
ラベンダーのいい香りがする。
蜂が蜜を吸ってる姿が可愛い。
母と私はたわいない会話をしたことがない。
いつも真剣な話しでムダがなかった。
このひとときに幸せを感じる。
時間や空間を大切にして一瞬一瞬を心に刻むことを決意した。
次の日の朝、母に会いに行くと
母:病院はいつ行くんだ?
私:まだ先だよ…
何回も説明したけど理解ができず、母は頭を抱えている。
なぜなら内科、肺専門の病院、整形外科とカレンダーに予約が書き込まれている。
母は予約の概要を整理しようにも脳が追いつかない。
休憩を挟み、母の顔を見に行くと、
病院に行く時のバックが玄関に置いてある。
母:今日病院に注射に行く日だよ
私:えっ?この前行ったじゃない?
確認の為、注射の手帳みたら2種類打つことがわかった。
今度は複数の病院の場所に困惑している。
丁寧に説明をすると
納得したのか散歩の準備をし始めた。
母:「皆んなに迷惑かけるなぁ…」
「人生の順番だからしょうがないって人に言ってた事が自分になるなんて…」
(靴を履きながら私の手を探してる)
私:お母さん、欲しいもの思い出した?
母:うん、時計
私:えっ?食べものじやないの?
母:うん、いまの時計見えにくいから欲しい。
私:わかった。
いつものロータリーのコースを休憩2回入れて歩く。
頑張ってる母の姿はかっこいい、大好きだ。
私:また明日ね
母は新聞を見ながらすましている。
母が現役引退してからは料理がつくりやすくなった。
味のチェックもなくなり、
人から作ってもらう料理は全て美味しいといつも褒めてくれるのです。
明日はひじき豆を作ってみようかな…
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