母と私の奇跡の介添えストーリー#10
「葡萄が繋いだ…母の命」
2021年9月大安
崩壊した夜、吐き気や頭痛、食欲不振に陥った。
そして2日後…
父は葡萄を持ってきた。
父:「お母さんに頼まれたから…あげる。」
私:「ありがとう、お母さんの具合どう?」
父:「ずっと寝てて起きてこない…」
父は背中を丸め、痛い足を引きずりながら車に乗って帰った。
突然、電話が鳴った…親戚の叔母さんからだ。
叔母さん:「お父さんにお母さんの容体を聞こうとしても話さないから教えてほしい、来てくれる?」
私は支度して200メートル先の叔母さんの家に急いだ。
母について一連の流れを話すと叔母さんはショックで塞ぎ込んでしまった。
母の身体は深刻な状態である。
話は衣食住、かかりつけ医や薬の付き合いかた、父の動向、店の状況など丁寧に話した。
今日、父が葡萄を届けなければ、私は母に会いに行くことはなかっただろう
9月6日赤口
11時半、実家に着くとリビングは灯りがついたままで母は姿はない。
二階にあがると、安定感のある椅子に背を後ろにして座っていた。
昨日の父は、なかなか起きない母の姿に深刻な顔をしていたが、
母は、いつもと変わらない様子である。
身長150センチ、体重27キロ
傍から見ると心配な体つきだが、魂は図太くたくましい。
私の顔をみるなり低い声でこう切り出す。
母:「貴方、この前お父さんにひどいこと言ってたな!なんでだ?」
私:「もうお父さんと仕事がしたくない…もう限界だったしもう厨房に居たくない。」
母:(黙っている)
私:「だけどお母さん、お父さんは私を病人扱いしてけどウチの旦那さんはね、こんな言葉を掛けてくれたんだよ。」
「どんな君でも僕は我慢できるよ。お母さん、この言葉にすごく救われたんだよ。」
「小さい頃から私が欲しかったのはこれなんだよ。わかってくれる?」
母はうつむいていたが、しばらくして母の口角は上がっていた。
雨が降りそうなので帰り支度してると
母:「寂しくなるよ…コーヒー飲みたいな」
散乱している新聞を片付け、期限切れの薬を処分した。
私はこの薬を眺めながら母にこんなことを言ってみた。
私:「お母さん、日本に住んでるからこの薬を捨てる選択があるけど海外ならこの薬は喉から手が出るほど欲しがるよ… 」
「私は日本に守られているし、日本人に生まれてきて良かった。」
「生まれた場所が違ったら今頃どうなってるかわからない。この環境に感謝しなければいけないね…」
母:「なんとかならないのかな…」
いつもの日常の会話に戻った。
2021年9月友引
その日叔母さんは、介護保険の申請をする為、父と一緒に市役所へ同行してくれた。
そしてサービス内容を理解し面談する日を決めてきた。
父は安心した顔つきで味噌汁をつくり、漬物を食べやすいよう刻んでいた。
一家の緊急事態の中、弟は店に復帰した。
父と弟は数年前一緒に店をやってたが仕事のやり方、経営方針があわず弟は退いた。
あれから数年、今はお互いが気を遣いながら淡々と仕事をしている。
母も息子の仕事ぶりに安心している。
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